指より耳


 なにかとKUBさんの名前が出て来くるので少しゴマをすっておきます。
 彼の音色は本当に美しく、メロディーの歌い回しもなかなか上手なのです。聴いていてホレボレする事があります。いわゆる音に色気があるのです。
 最近島根の方から、この「音の色気」についてメールを頂きました。私なりにこの「音の色気」について考えてみたいと思います。なにぶん音の事なので文章で表現するのは難しいのですが、ギターから出る音色は、楽器の良し悪し、右指のタッチ、左手の押さえ加減等多くの要因があると思います。なかでも右指のタッチが大きく起因しています。初心者に高価な楽器で音を出してもらってもやはり良い音色が致しません。

 次に二つ以上の音(メロディーにも関係する)となると、音と音のつなぎ、その間、音の粒、歌わせ方が重要になってきます。これらを上達するのはかなり厄介で、まず何よりも自分の奏でる音色を聴くことが大切です。それも中途半端に漫然と聴くのではなく、しっかりと意識を持って聴くことが重要です。特に私たちギターを勉強している者は、たとえばバイオリンや笛を演奏する方々とは違って自分の音を聴く習慣というものが身についておらず、両指さえ動いていれば楽器が鳴っていると勘違いしている人の多いこと。

 私はこれを生徒さんに教える時、管楽器のようにロングトーンを弾いてもらい、自分の音が消えたら指を離してくださいと伝えています。ギターは爪弾いた瞬間音が消えてしまう訳ではなく、相当長く響いているものです。そのようにして自分の音を聴く習慣を身につけてもらうのです。そして二つの音(3度、6度等の和音)も同じようにしていくと良い結果が得られるように思います。

 もう一つ、歌わせ方ですが、これは良い演奏、良い音楽を沢山聴くことです。これも中途半端に聴かず自分なりに落とし込めるまで繰り返し繰り返し聴くことです。また私のお勧めは、音楽だけではなく、良い絵を見ること、そして良い本を読むことも大切だと感じています。絵画も文学も音楽と同じで、その作者のタッチや間がありますから。

 いささか本筋から離れてしまった気もしますが、私自身、未だに色気のある響きを模索して練習しているのです。